ライター:神結
《真気楼と誠偽感の決断》の影響を探る
王道Wの第1弾『邪神vs邪神 ~ソウル・オブ・ジ・アビス~』が発売されたのは、4/19のこと。
そこから約一週間、界隈はある1枚のカードの話題で持ち切りになった。
ご存じ《真気楼と誠偽感の決断》である。

デュエル・マスターズにも増えつつある「手札誘発型」のカードではあるが、この新カードは手札誘発から任意のS・トリガーカードに繋ぐことができる点があまりにも異質であり、斬新な点であると言える。
またそうでなくとも自分のターン中にマナコストを払って唱えても普通に強いという点も、特筆すべきであろう。
そのため、発売直後の初週の段階では非常に入賞報告も多く、あらゆるデッキに採用されたケースを見掛けることになった。
では今回のハレスリーCSハイパーでは、実際どれほど《真気楼と誠偽感の決断》は支配的だったのだろうか。まずは、全デッキ分布を確認して欲しい。
主要デッキ分布
デッキ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
火光闇ファイアー・バード | 42 | 14.89% |
光水闇ヘブンズ・ゲート | 39 | 13.83% |
火光水ゴスペル | 26 | 9.22% |
火光自然ドリームメイト | 26 | 9.22% |
火光自然ボルシャック | 19 | 6.74% |
火光水庵野水晶 | 12 | 4.26% |
水闇COMPLEX | 8 | 2.84% |
水自然ジャイアント | 8 | 2.84% |
水闇自然マルル | 8 | 2.84% |
闇単アビス | 7 | 2.48% |
火水闇鬼ヶ覇覇覇 | 7 | 2.48% |
ゼニス・セレス系統 | 6 | 2.13% |
4cドラゴン | 5 | 1.77% |
4cフシギバース | 5 | 1.77% |
闇自然バロム | 5 | 1.77% |
その他4名以下 | 59 | 20.92% |
合計 | 282 | 100% |
最大数となったのは【火光闇ファイアー・バード】であり、ほぼ同数で【光水闇ヘブンズ・ゲート】が続く。そこから少し離れて【火光水ゴスペル】、【火光自然ドリームメイト】、【火光自然ボルシャック】などが続き、5名以上の使用者がいたデッキは上記の通りだ。
このうち、《真気楼と誠偽感の決断》を採用しているのは【光水闇ヘブンズ・ゲート】、【4cフシギバース】といったデッキになる。【火光水ゴスペル】や【火光水庵野水晶】にも採用されているケースはあるものの、主流派ではない。
【ヘブンズ・ゲート】の分布を見る限り、《真気楼と誠偽感の決断》の影響は大きく何かしらの対策が必須なのは事実だ。
では実際のところ、どれほど結果を残したのだろうか。予選を突破した計64のデッキ分布をご紹介しよう。
本戦デッキ分布
デッキ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
火光闇ファイアー・バード | 13 | 20.31% |
火光自然ドリームメイト | 12 | 18.75% |
火光水ゴスペル | 8 | 12.50% |
火光自然ボルシャック | 7 | 10.94% |
4cフシギバース | 4 | 6.25% |
光水闇ヘブンズ・ゲート | 3 | 4.69% |
ゼニス・セレス系統 | 3 | 4.69% |
火光水庵野水晶 | 2 | 3.13% |
水闇シヴァンリンネ | 2 | 3.13% |
水闇COMPLEX | 1 | 1.56% |
水闇自然マルル | 1 | 1.56% |
闇単アビス | 1 | 1.56% |
5cザーディクリカ | 1 | 1.56% |
闇自然バロム | 1 | 1.56% |
光水闇ジャスティスループ | 1 | 1.56% |
4cディスペクター | 1 | 1.56% |
水闇自然グラスパー | 1 | 1.56% |
自然単スノーフェアリー | 1 | 1.56% |
4cガイアッシュ覇道 | 1 | 1.56% |
合計 | 64 | 100% |
なんと【火光闇ファイアー・バード】とほぼ並んで最大数だった【光水闇ヘブンズ・ゲート】の予選突破数はわずかに3名まで落ち込んでしまった。
他デッキの多くが使用数に応じた突破数になっている中で、明らかにこれは少ない。
【ファイアー・バード】に関しては、《ハンプティ・ルピア》の存在が大きく、《真気楼と誠偽感の決断》に対して一定の耐性があるのはわかりやすいだろう。
一方で先週時点での下馬評では、《真気楼と誠偽感の決断》によって向かい風ではないかとされていた【ドリームメイト】だったが、こちらは【ファイアー・バード】と並ぶほどの突破数を出した。
そもそものデッキポテンシャルが高いことに加えて、対《真気楼と誠偽感の決断》という観点においても《お騒がせチューザ》を採用できる点が大きく、「対策しようと思えばできる」というのが要因だろう。
その他《水晶の王 ゴスペル》は《真気楼と誠偽感の決断》を採用するリストもしないリストもあったが、いずれにせよ《ファイナル・ストップ》で【ヘブンズ・ゲート】を強くみており、【ボルシャック】や【庵野水晶】には《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ》が、そして【ゼニス・セレス】には《蠅の王 クリス=タブラ=ラーサ》が存在しており、上位ほぼすべてのデッキに呪文封殺が採用される結果となった。
つまるところ、もう来ているのだ。
「《真気楼と誠偽感の決断》は、既にメタられている」というところまで。
このスピード感、ついていけるのだろうか。
なお、それを踏まえて《真気楼と誠偽感の決断》に弱いデッキは予選では順当に苦戦している。
例えば【水自然ジャイアント】の使用者は8名だったが、予選突破数は0。「一周回って」のターンにはまだ来ていないようだ。
その他、印象的なデッキでいうと【4cフシギバース】が挙げられるだろうが、こちらは少し特殊なデッキであるため後述しよう。
各種デッキについて
ファイアー・バード




もはや説明不要の環境トップデッキである。新弾によって強化された部分などは特にないが、万能のデッキとして今大会では使用数・予選突破数の両方でトップとなった。
総合戦績は124-114の勝率52%であり、トータルでわずかに勝ち越している。
主要デッキに対する勝率を見てみると、実は【ヘブンズ・ゲート】に対しては9-14と負け越してはいる。しかし【ドリームメイト】には13-12と僅かに勝ち越し、【ゴスペル】には18-3と完全にカモにした。
また【ファイアー・バード】のTier外デッキへの相性、俗に「雑多耐性」や「マジレス性能」などと表現される部分だが、ここでも43-34と順当に高い勝率を上げている。長く環境にいて弱点もわかられている中で、この数字は見事だ。
「あらゆるデッキに一定の勝率を残し、環境で評価が高いデッキに大きく有利を取れ、環境外デッキにも相性がいい」というデッキの優秀さを数字の上でも示しており、少なくとも今後のCSや来るGPに於いても多く見掛けることになるのは間違いなさそうだ。
ヘブンズ・ゲート




今回、かなり苦戦を強いられる結果となった。
ただ勝率的な観点から行くと、そこまで落ち込んでいる訳ではない。総合戦績は94-108の47%と負け越してはいるものの、前述の通り【ファイアー・バード】には勝ち越した。【ゴスペル】(7-7)もぴったり五分で、【庵野水晶】(7-2)や【水闇COMPLEX】(5-4)といったお得意様もいた。
こう考えると予選突破数に関しては、トータルで下振れている可能性も考えられよう。
ただ当然ながら懸案事項自体はちゃんと存在しており、そのうちの1つは対【ドリームメイト】で脅威の4-14と徹底してカモにされてしまったことだろう。
特に予選上位卓には【ドリームメイト】が多かった事から、予選終盤の直接対決で敗北したことは予選突破数に大きく響いたことだろう。
またもう1つの問題点として、なんとミラーマッチの勝率が“データ上”41%しかない。本来50%になる数字がこのような結果になっている原因は、デッキ性質上ミラーマッチが「時間切れ両者敗北」になるケースが多いことを示している。
加えて「その他」デッキに対しても24-25と勝率を伸ばせなかったのも痛く、「包囲網」の影響があったのは間違いない。特に大抵のTier上位デッキたちはここで勝率を稼いでいる部分はあるので、差が付けられた要因にもなっているのだろう。
《真気楼と誠偽感の決断》が強力なのは間違いないことから、今後はどういった部分で勝率を改善していくのか。使用者の腕が問われるだろう。
ゴスペル




相手の呪文を封殺しつつ安全なフィニッシュを目指せることから、【ゴスペル】は《真気楼と誠偽感の決断》環境での適正が高いと言えるデッキだろう。複数枚の《ファイナル・ストップ》を採用した構築が殆どであった。
また採用者は少なかったものの、自身が《真気楼と誠偽感の決断》を使用することも可能である。
一方でデッキが固有で持っている弱点などは新弾によって根本的な解決が図られたわけではなく、脆さも抱えるデッキだ。
全体勝率は64-69と、やや負け越しとなっている。
直接的な要因は、前述した対【ファイアー・バード】で3-18という悲惨すぎる成績を残したことだろう。また実は環境上位デッキに対して五分か負け越しが多く、【ドリームメイト】(9-12)にも【ボルシャック】(4-5)にもめぼしい結果は残していない。
しかし予選突破数が全体3位であったのにはそれなりに理由があり、それが「その他」のデッキに対して20-15と一定の勝率を残したことだろう。
フィニッシュが安全ということで楯から捲られるケースもほぼないため、「雑多耐性」が高いのは間違いない。ただ本戦では上位デッキへの相性が良くないことからベスト8までに全員が姿を消すことにはなっている。
ドリームメイト




この日一番の勝ち組は【ドリームメイト】で間違いない。優勝に3位という結果も残し、加えて全体勝率は100-67と、脅威の60%もあった。
上位デッキで負け越したのは【ファイアー・バード】に【庵野水晶】のみで、それ以外には全て五分以上の戦績となっている。特に前述した【ヘブンズ・ゲート】を大きくカモにしたこと、「その他」デッキにも25-20としっかり勝ち越したことは大きい。
リストを見ると多くのプレイヤーが《お騒がせチューザ》を採用し、《真気楼と誠偽感の決断》に対抗している。《注文猫のウェイ》での即時起動や、《忠犬な騎士スゴイワン》と併せた封殺など、複数のカードによるセット運用も強く、【ドリームメイト】は今後も戦えるデッキであるのは間違いなさそうだ。
決勝のカードは「ファイアー・バード vs. ドリームメイト」であったが、引き続きこの2つのデッキが環境を牽引していくことになると思われる。
ボルシャック




今回活躍を見せたデッキとしては、【ボルシャック】の名前は挙げていいだろう。使用者数も多く、全体勝率も56-53と僅かではあるが勝ち越した。
使用が伸びた理由については、《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》を《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ》にチェンジさせるという、環境上でもっともお手軽かつわかりやすい呪文封殺が可能な点だろう。
その上で仮に《光開の精霊サイフォゲート》のようなトリガーを踏んでしまっても、《竜皇神 ボルシャック・バクテラス》を始めとした強力なドラゴンたちの力で、それを踏み越えていくだけの破壊力も備えている。
集計結果では少ない母数ながらも【ファイアー・バード】(7-4)、【ヘブンズ・ゲート】(11-7)というトップ2に勝ち越し、同じく《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ》が効果的な【ゴスペル】(5-4)や「その他」(21-15)など、強さを見せた相手が多かった。
また新弾の《王闘竜皇 ボルシャック・ドラゴン》を採用しているリストもあり、こちらは今後の伸び代になるかもしれない。今後の活躍も楽しみなデッキと言える。
庵野水晶




逆にあまり結果を残せなかったのが、【庵野水晶】のデッキだ。
このデッキはドラゴン娘のデッキで新登場した《庵野水晶》を軸に、光のドラゴンを使いながら詰めていくデッキだ。
上手く回れば《ギャラクシー・チャージャー》、《理想と平和の決断》などで手札を抱え込み、《庵野水晶》を革命チェンジしつつ《転生スイッチ》などでアタキャンしていく……というのが基本的な戦いとなる。
またテンプレではないものの、このデッキも《真気楼と誠偽感の決断》を採用しているケースがあり、こちらは《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》のEXライフを自身で砕いて革命チェンジさせる、といった使い方がある。
速度感には一歩遅めなのと、このデッキが流行の《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ》などの呪文封殺に弱いこと、更に《庵野水晶》を拾いにいく手段が少ないなど、問題点は結構ある。
実際今回の大会ではこの問題点が勝率に反映されてしまっており、トータル勝率は26-35と43%しかなかった。個別で見ても【ファイアー・バード】(4-5)と【ヘブンズ・ゲート】(2-7)のトップ2に負け越し。「その他」には11-9となんとか勝ち越したものの、上位デッキには結果を残せなかった。
ただ登場したばかりのデッキではあるので、今後の拡張に期待したい。
4cフシギバース




最後の紹介になるが、【4cフシギバース】について触れておこうと思う。
使用者数が少ないこともあって数字的な勝率は出せなかったが、このデッキの強さは「全体使用者5人のうち、4人が予選を突破した」ことで説明が可能だろう。
このデッキのコンセプトは、合気道的とも言うべきか、とにかく「相手の力を逆利用して勝つ」ことに優れている。
トリガーの枚数は《終止の時計 ザ・ミュート》や《逆転の影ガレック》を軸に、16枚程度が採用。その上で《流星のガイアッシュ・カイザー》や《飛翔龍 5000VT》、といったカードたちも採用されている。
ただこのデッキの軸と言えるのは《真気楼と誠偽感の決断》と言っていいだろう。
例えば相手の《ヨビニオン・マルル》に対して《流星のガイアッシュ・カイザー》を当てることで3体条件を達成し、《真気楼と誠偽感の決断》を発動。
S・トリガーであればカードタイプを問わないので、《逆転の影ガレック》などを使用し、それを《ブラキオ龍樹》や《大樹王 ギガンディダノス》へ繋げる、というのがデッキとしての戦い方だ。
一方で《天災 デドダム》から《真気楼と誠偽感の決断》手撃ちといったルートもあり、必ずしも受け一辺倒ということではない。
リストや戦い方もそこまで浸透しておらず、困惑しているうちに負けたといった人もいたのではないだろうか。
残念ながらギリギリベスト8には残れなかったが、予選突破率を考えると驚異的なデッキであると言え、今後の活躍も期待されるデッキである。
今後の展望
ここまで全体分布に本戦分布、そして主要デッキの勝率を見てきたが、今後の環境はどうなるのだろうか。
今回の結果を踏まえると、現時点では【ヘブンズ・ゲート】にも問題点は多く、対抗手段が存在していることはわかった。
今後は「ある程度広く勝てるファイアー・バード」が環境の軸となりつつも、《真気楼と誠偽感の決断》を巡る戦いは続くだろう。
来月にはGPが開催される。
それを前に、環境の回答と言えるデッキは生まれるのか。
それとも裏ではGPに向けた極秘のデッキが開発されているところなのか。
新弾のカードの出力もわかってきた頃合いなので、本番を前にもう一波乱あることに期待したい。