ライター:原田 武(たけじょー)
「デュエル・マスターズは、準備のゲームだ」という格言がある。デッキ選択。デッキ細部の調整。そしてプレイング。それらをいかに高い精度で準備できるかどうかが、勝敗を左右する。そんな意味合いの言葉だ。
そして、準備の際に必要な行動が一つある。それは選択だ。強みと弱みがそれぞれ違うデッキから、ひとつ選択する。40枚の枠の中に、どれを何枚採用するか選択する。練習を繰り返す中で、シチュエーションごとの最良の応手を選択する。
デュエル・マスターズを遊ぶ上で、これらは避けては通れない。誰よりも準備し、慎重に選択すれば、その分だけ勝利を引き寄せやすくなる。

この日、ニキアタルデは【闇単アビス】を選択し、準備した。
ニキアタルデ「少し前までは【ドリームメイト】を使っていたんです。でも、《真気楼と誠偽感の決断》で戦いづらくなってしまって……」
革命チェンジや光臨を駆使して戦う【ドリームメイト】。だからこその圧倒的速度とエクストラウィンという強力無比な勝ち方が持ち味なのだが、《真気楼と誠偽感の決断》の出現が逆風となった。3体以上の同時展開に、強烈な裏目が生じることとなったのだ。

このカードが搭載されていると勝利への要求値は跳ね上がる。しかし、意識したプレイが空振りすれば本末転倒である。このジレンマが厄介だ。加えて、手札の引き込み方次第で出力にブレが生じることも、長丁場の大会では不安要素だった。
ニキアタルデ「だから、【闇単アビス】を使うことにしました。元から横展開するデッキが好きだったのと、マナカーブ通りに動くこと、単色ベースのデッキで事故がないことが大きかったですね」
【闇単アビス】が大量展開を行うのは総攻撃の直前、《真気楼と誠偽感の決断》は効きにくい。そもそも《奇天烈 シャッフ》で止めてしまってもいい。除去や妨害、手札破壊を多彩に備えていて、幅広い相手と戦っていけるのも強みだろう。
結果的に、その準備と選択がニキアタルデを準決勝まで連れてきた。あと2試合、都合3勝すれば、優勝に手が届く。
だが、如何なる因果か。あるいは、単なるトーナメントの収束の結果か。
だが、如何なる因果か。あるいは、単なるトーナメントの収束の結果か。ここで立ちはだかったはまたくの手に握られていたのは、彼が選択しなかった【ドリームメイト】だったのである。
Game
先攻:はまたく
1ターン目のはまたくのプレイは、《フェアリー・ギフト》チャージからの《お目覚めメイ様》。
傍目にも明らかな強さで、ニキアタルデが息を吸う。2マナものジャンプアップが可能な《フェアリー・ギフト》を埋めてまでの《お目覚めメイ様》。自然マナを捻出するために割り切ったのか。あるいは。
ともあれ1ターン目に動きようがないニキアタルデは、《ブルーム=プルーフ》チャージで手番を返すしかない。
はまたくは《トレジャー・マップ》から《料理長のラビシェフ》を回収。墓地に《トレジャー・マップ》を置いたその手を止めず、バトルゾーンの《お目覚めメイ様》に掛ける。
はまたく「アタック、チェンジ」

《森夢のイザナイ メイ様》。
【ドリームメイト】最強の動き、先攻2ターン目のチェンジ《メイ様》にニキアタルデは思わず吹き出してしまう。あまりにも、全てが揃っている。そして彼のデッキに、この状況を覆しうるS・トリガーは入っていない。
結果、なんの問題もなく〈光臨〉が起動。これが《激烈元気モーニンジョー》を呼び出すと、当然顔で手札から《料理猫のプワソン》が降臨。先程の《料理長のラビシェフ》を繰り出して、はまたくの布陣を2ターン目にしてほぼ完成させてしまう。
一応、といった面持ちで《ブルーム=プルーフ》を送り出すニキアタルデではあるが……つい先日まで使い込んだ【ドリームメイト】だ、これくらいは超えてくることを、彼が知らぬはずもない。果たして、はまたくは再度《お目覚めメイ様》を召喚し、《トレジャー・マップ》で《ピザスターのアンティハムト》を回収してから《森夢のイザナイ メイ様》で攻撃。
《料理長のラビシェフ》効果でタップされた《ブルーム=プルーフ》を殴り返したら準備万端。終了時に〈光臨〉、《ピザスターのアンティハムト》→《ピザスターのアンティハムト》→《お目覚めメイ様》でターン終了。
既にはまたくの手元にはドリームメイトが7体、うち《お目覚めメイ様》は2体。使用可能マナが3しかない今、《漆黒の深淵 ジャシン帝》による除去だけではとても足りない。
ニキアタルデ「全部持ってるって~~~!」
頭を抱えて天を仰ぎ、ニキアタルデは投了を選択した。
Winner:はまたく
ニキアタルデ「いや、これは……ってなった(笑) 絶対に間に合いませんね!」
はまたく「(必要なカードを)全部持ってましたね(笑)」
ニキアタルデ「【ドリームメイト】に逆襲されましたわ……」
感想戦……というより、【ドリームメイト】談義にシームレスに移行する両者。はまたく曰く、《真気楼と誠偽感の決断》は厄介ではあるものの、展開の仕方等プレイスキルでなんとかなる場面もあるのだという。
同時に、《お騒がせチューザ》を十全に活かせる構築にもこだわったとのこと。はまたくの場合、《ピザスターのアンティハムト》・《魔誕幻獣ボンメェ》と併せて火文明を6枚投入。手札からの召喚も視野に入れられるよう、配分には気を使ったとのことだ。
ややあってもう一つの準決勝が終わり、決勝戦の時間がやってきた。
ニキアタルデ「決勝、獲ってきてください!」
送り出すニキアタルデに応えるはまたく。
準備と選択に、正解はない。それでも、それを1ミリメートルでも正解に近づけるために、プレイヤーは試行錯誤するのだ。